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Q&A

狂犬病疫学

 

  • Q1.日本の動物でサーベイランス(調査・監視)は行われているのでしょうか?
  • A1.狂犬病予防法第8条に以下のように規定されています。【狂犬病の犬等、狂犬病にかかった疑いのある犬等、またはこれらの犬等に咬まれた犬等を検案もしくは診断した獣医師は直ちに保健所に届け出をしなくてはならない】

    こうした疑いをかけられた犬、猫、キツネ、アライグマ、スカンク等を届け出させることによって、発生を探知するという方法でサーベイランスを行っています。

 

  • Q2.猫が疫学上、重要な媒介動物になる可能性はあるのでしょうか?
  • A2.これまでの知見では猫の集団内での感染環が成立しないため、犬ほど重要な媒介動物になることはないと考えられます。

 

  • Q3.狂犬病は人から人へ感染しますか?もしするなら、どのような経路で感染しますか?
  • A3.これまで海外では、臓器移植による感染が数例報告されています。その他の感染経路については、可能性は0ではありませんが、人から人への感染はきわめてまれです。

 

狂犬病の症状・診断等

 

  • Q4.咬傷事故を起こした犬が感染しているかどうか判断するにはどうしたらよいでしょうか?
  • A4.この場合の咬傷事故は、犬が人を咬んだ事故であるとしてお答えします。
    その犬が、被害者である人を咬んだ時に狂犬病を感染させる可能性があるかどうか判断するためには、咬傷事故後に2週間程度、犬の観察を行う必要があります。事故当時に唾液中に狂犬病ウイルスを排泄していたとすれば、その犬は2週間以内に何らかの神経症状を示した後、死亡します。逆に言うと、2週間以上生存していれば咬傷事故での狂犬病感染の可能性はないと判断できます。(WHOは加害犬や猫の観察期間を10日間としています)犬が死亡した場合には「必ず」確定検査を実施しなくてはなりません。確定検査が陽性の場合には咬まれたヒトは直ちに発症予防処置をしなくてはなりませんが、陰性の場合には発症予防処置は不必要となります。これは咬まれた人において感染が成立したかどうかを検査する方法がないからです。

     

    また、もし各自治体に確認して狂犬病鑑定に関する条例等やマニュアルがあれば、それに沿ってその犬が狂犬病であるかどうかの確認を行ってください。

    しかし、咬傷事故を起こした犬が定期的にワクチン接種されていれば、狂犬病に感染する可能性はほとんど有りません。

 

  • Q5.狂犬病で死亡している犬は、狂犬病が原因で死んでいるのでしょうか?それとも他の要因(誤嚥など)で死んでいるのでしょうか?
  • A5.死因は様々だと思われますが、死亡した犬が狂犬病であった場合もしくは狂犬病の疑いが濃い場合には、死因を特定するための剖検を行うべきではないでしょう。疑いが濃い場合には、遺体を確定診断に回す手配をしてください。

 

  • Q6.麻痺型について、末梢の運動麻痺と考えられるような症状も多いように見受けられます。尾、耳、まぶた等の運動麻痺はあるのでしょうか?
  • A6.あると考えられますが、確認はされていません。

 

  • Q7.無表情で咬むという事について、それは表情筋の麻痺なのでしょうか?また、末梢の知覚麻痺はあるのでしょうか(耳先、パッド等)? あるとすれば、そのような知覚麻痺に伴う異常行動である可能性はあるのでしょうか?
  • A7.威嚇や恐怖の感情がなく咬みつくため、無表情で咬みつくものと考えられます。顔面の筋肉の麻痺で無表情になっているわけではありません。また、末梢の知覚麻痺はあると思われますが、それによって無表情になっているわけではないと考えられます。

 

  • Q8.タイのベーラ博士らが提唱する17徴候の軽度の時、呼びかけに対しての反応はどうなのでしょうか?
  • A8.不明ですが、呼びかけに反応するか否かで狂犬病を判断することはできないと思われます。

 

狂犬病への対応等

 

  • Q9.咬傷事故で咬まれた人には何と伝えればよいですか?(今現在と発生した場合)
  • A9.咬まれた人には、病院に行って咬傷の治療を行うように伝えてください。その後の対応については、Q&Aの11をご覧ください。

 

  • Q10.病院で狂犬病疑いの犬が来院した場合、人用のワクチンがほとんど確保できない現状で、獣医師とスタッフの安全を確保しながら診察するための方法、注意点、そして用意しておくもの等はありますか?タイのような施設も国内にないので、どこに連絡、引き渡しをすればよいかも含め教えてください。
  • A10.人用ワクチンは潤沢ではありませんが存在するので、臨床獣医師や行政獣医師はあらかじめワクチン接種を受けておくことが望まれます。一番大事なのは、狂犬病の可能性を常に頭に置きながら犬を診察することではないでしょうか。そのためには、狂犬病の犬の臨床症状を知ってく必要があります。また、狂犬病の疑いが濃厚な動物については、隔離して最寄りの保健所等に連絡する必要があります。

 

  • Q11.国内外で種々な動物に咬まれる、引っ掻かれる、舐められる、唾液や体液等をかけられる等で、ワクチン接種の必要の有無はどう判断すればよいですか?
  • A11.日本国内で犬と猫に咬まれたり引っ掻かれた場合、すぐに曝露後ワクチンを接種する必要はありませんが、動物の観察をしっかり行い、その動物が狂犬病に感染していないことを確認することは非常に重要な作業です。狂犬病であった場合には直ちに曝露後予防処置が必要となるからです。感染の確認は、地域を管轄する保健所などに相談し、その地区に条例またはマニュアルなどがあれば、それに沿って対応を行います。また、Q&Aの4も参考にしてください。加害動物が行方不明の場合は、被害者の希望があれば曝露後ワクチンを検討します。

    狂犬病常在地で被害にあった場合、その動物がその地域の狂犬病危険動物であればWHOが勧告している方法で処置を行います。病院を受診する際は、しっかりした施設、スタッフの配置されている病院を選ぶことが肝要です。

    1. ただちに傷口を流水と石鹸で十分に洗浄します。

    2. 70%エタノールまたはポピドンヨード液で傷口を消毒します。

    3. 組織培養不活化ワクチンを、初回接種日を0日として、0、3、7、14、30日の計5回接種します。場合により90日に6回目の接種をします。曝露後免疫処置の途中で日本に帰国した場合、日本国内の病院で曝露後免疫処置を続けてください。

    4. 必要に応じて人狂犬病免疫グロブリン20IU/kgをできるだけ傷口に、残れば肩に注射します。

    なお、私たち狂犬病臨床研究会では個別のケースの相談をお受けすることができません。個別の事例の相談は地域の保健所に相談なさってください。

 

狂犬病予防対策

 

  • Q12.狂犬病動物(もしくは疑い動物)に使用したケージの消毒はどのようにしたら良いでしょうか?
  • A12.狂犬病ウイルスは比較的不安定なウイルスで、石鹸液や70%エチルアルコールで不活化されますので、これらで消毒を行ってください。また、医療従事者などで、エーテル、クロロホルム、アセトン、5-7%ヨード剤、第4級アンモニウム化合物を取扱いできる場合は、これらの薬剤を用いて消毒することもできます。また、狂犬病ウイルスは加熱にもきわめて弱いので、加熱による消毒も効果的です。

 

  • Q13.犬のワクチンは100%狂犬病を防ぐことができますか?
  • A13.人用も含め、あらゆるワクチンに100%の防御は期待できません。狂犬病ワクチンも同様です。しかし、複数回ワクチン接種を重ねることによってほぼ100%防御可能です。

 

  • Q14.狂犬病予防ワクチンの接種率が低いままなのはなぜでしょうか?
  • A14.犬の飼主に、狂犬病という病気についての情報がうまく伝わっていないせいかもしれません。また、獣医師や医師あるいは狂犬病予防業務に携わる自治体職員の危機意識(および知識)が足りないことも一因かもしれません。予防意識の啓発が大変重要であると考えられます。

 

海外の狂犬病事情

 

  • Q15.台湾での動物への狂犬病ワクチン接種率はどの程度ですか?日本と比べてどうなのですか?
  • A15.2012年までは、飼育されている犬猫の26%程度が接種されていたと聞いています。2013年7月時点では40%程度が接種されています。(40%程度の数字は、日本の推定接種率に近い数字なのかもしれません。)しかし、発生した山間部では飼い犬と猫にはほとんど接種を済ませたと報告されています。

  • Q16.台湾でネズミにも感染が確認されたようですが、ネズミはあまり怖くないのでしょうか?
  • A16.台湾で確認されたのはアジアイエトガリネズミですが、その後報告はないので流行を維持できる動物ではなく、偶発的に感染したものと思われます。アジアイエトガリネズミは、げっ歯類(ネズミ目)ではなく、トガリネズミ目の動物で、モグラやハリネズミと近縁の動物です。狂犬病媒介動物として重要であるかは不明ですが、狂犬病を発症した動物はいずれも人や他の動物への感染リスクとなるので、注意するべきだと考えられます。

 

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令和2年10月4日に開催された世界狂犬病デー2020ウェブセミナーで出された質問と回答は以下で確認することができます。

 
 
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